2014年10月05日
1.はじめに
太極拳と言いますと、まず、ゆっくりと動く型稽古を思い浮かべる事と思います。あの型稽古だけが太極拳と思っている方もいる事でしょう。
現在、太極拳を指導するという時、ほとんどが24式太極拳というものです。24式太極拳は1950年代に中国で人民の健康向上の為に、伝統的太極拳を編纂して短く簡単にしたものです。いわば量産普及タイプです。それでも効果が高いので、瞬く間に世界的に広がったものです。しかし、普及させるために失ったものもあります。
本来、太極拳の型というのは、太極拳という武術体系の中で、練習の1つにすぎません。重要な練習ですが、型がすべてではありません。太極拳独自の動きを作るのに必要な多くの秘伝的な鍛錬や、気功のような呼吸中心の練習、2人で行う対人練習等、多彩な練習内容があります。
健康法としてのみ太極拳を行うとしても、やはり鍛錬は行う方が効果的です。何故かと言いますと、太極拳の動きは、ほとんどの方にとって、経験した事のない動きであるからです。馴染みのない動きや感覚を得るためには、型だけよりも鍛錬を行う事が、短期間で効果を上げる事になるからです。
もともと太極拳のような武術は、1人の指導者が少人数の弟子を相手に、細かい身体操作を教え込んでいくものです。手の上げ下げ・足の踏み出し方・指の力加減等にも、事細かに注意点があります。こうした技術は、民間で草の根的に伝承されてきたもので、多くの口伝や秘伝によって一門の財産として守られてきたものです。
ですから、ある程度の技術を身につけようと思った時、マンツーマンで習わないと、なかなか上達は難しいものです。
太極拳が上達していくというのは、運気といって身体の中で力の運用が出来るようになり、それによって、ただの筋力とは違うレベルでの力が出せるようになる事です。また、滑らかな動きが可能になり、全身が強調する早い動きも出来るようになるという事です。こうした太極拳の身体、というようなものが出来てくるので、それに付随して身体能力も全般的に向上してくるわけです。身近なところでは、立ち姿・歩く姿が良くなる、という特典もあります。