鍼治療あれこれ
直径0.16ミリ 長さ4センチ。これは私が一番よく使う鍼のサイズです。鍼は長さと太さに幾つものバリエーションがあります。ほとんどのものは髪の毛程の太さで、掌に隠れるくらいの大きさです。こんな小さく細い物を上手く操ることで、痛みを和らげたり、動きの悪い所を改善したりしています。
鍼治療の方法には色々なやり方があります。肩こりを例に取りましょう。肩がこっているので、まさにその凝っている硬くなった筋肉に刺激を与える~という考え方があります。解剖学的に誰でも納得できるような鍼の打ち方です。この場合は肩の硬くなっている所に鍼をして、筋肉を緩めて血行を良くするという考えで鍼をします。別の考え方もあります。肩が凝っているのは身体の気の巡りが悪くなっている、だから気の滞りを治す、という考え方です。上半身に気が滞って全身に巡らない事が肩こりの原因と考えます。その時には肩こりという局所の症状を治すのではありません。その人の全身を視野に入れて気の巡りを良くする、という考えでの治療になります。場合によっては、冷え性の治療をする事で肩こりが良くなることもあります。このように、東洋医学ではその症状を治すというより、症状の背景にあるその人の身体の傾向に着目します。症状ではなく、「その人を治す」という事ですね。
鍼治療の特徴として、経絡という考え方があります。経絡というのは身体に張り巡らされた、「気」の通り道です。経絡は解剖しても存在していませんし、世の中の人のほとんどが了解している~という考え方ではありません。「目に見えて存在はしないが、機能としては存在する」というものです。
機能として存在する・・・というのは、足の甲や膝の裏に鍼をして腰の痛みが緩和されたり、痔の治療で頭の天辺にお灸をして楽になったり、経絡の理論で説明できる鍼の作用機序がいくつもある・・・という事です。
頭の天辺のツボからお尻に繋がる気の流れがあって、頭のツボが気血を引き上げる作用がある、という理論に適った結果が出るのです。
経絡という気の流れるルートの要所要所にあるポイントが「ツボ」です。ですから手のツボと顔がつながっていたり、足のツボが腰やおなかに繋がっています。顔面神経麻痺の治療では、顔にも鍼をしますが、手のツボも良く使います。顔に鍼をするというと、少し抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、これが意外に気持ちの良いものです。
ツボには特効穴といって、この症状にはこのツボ、という有名で便利なものもあります。腸の調子が悪い時に使うツボで、便秘点・下痢点というツボ。背中に6箇所ある胃の調子を整えるツボ、ここにお灸をする「胃の六つ灸」というのもあります。
鍼の適応はかなり広範囲にわたります。肩や腰の痛みだけでなく、内科や婦人科の症状も鍼の適応になるものがあります。頭痛や自律神経失調症などの症状も鍼の治療対象になります。
変わったところでは美容鍼といって、美顔目的の鍼があります。これはフェイスラインのシェイプアップや頬のリフトアップなどが目的の鍼です。
鍼はちょっと怖いと思う人もいるようですが、ほとんど痛みもありません。効果も比較的早い時期に出ることが多いものです。場合よっては劇的な効果がある場合もありますし、翌日に症状が良くなったり、徐々に症状が改善したり、と症状によって効果の出方には様々です。
鍼治療の適応かどうかは症状にもよりますので、まずはご相談下さい。
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