陸上競技者のゆううつ

渡辺克敬(わたなべ かつゆき)

2015年06月14日 16:50


 先日、陸上競技をやっている高校生が治療に来ました。最近筋トレが増えて、大腿部に痛みが出てきたとの事でした。治療を終えて、フォームを見てみると、下半身と上半身の連動が悪い、体幹の軸が立っていない、足裏の回転ポイントがぶれる、等がすぐ分かりました。私は陸上については素人なのですが、人の基本的な動きに関しては、武術を長くやっていると分かってくるものです。
 フォームの問題を指摘すると、同じ事をコーチに言われている、との事でした。ところがコーチは問題点の指摘をしても、改善の為の有効な指導をしていない様子でした。そもそも、筋トレを増やしながら、適切なストレッチの指導が無く、自宅でやるように、との指示で済ましているという事でした。練習前に行うストレッチは5分ほどであり、これでは身体を壊す、と嘆息しました。
 体幹を鍛える運動を行っているというので、見せてもらうと、確かに筋は鍛えられるでしょうが、競技に生かせていない、という事が分かりました。
 筋力強化が個別の筋を太くする事に終始し、競技に生かす身体の使い方をあまり考えていないようです。エンジンの排気量を上げる事に終始し、ドライビングテクニックを二の次にしている印象です。
 公立高校では、なかなか専門的なコーチを雇うのは難しい事と思います。短期間で結果が出やすい分かりやすい筋力強化のみを取り入れざるを得ない状況も分からないではありません。それにしても、この高校生に限らず、バスケや水泳部などで治療に来た学生に聞いても、筋肉の鎧を造る事には熱心でも、しなやかで伸び伸びした筋肉を造る方向に進まないし、身体の使い方を教えていないのは残念です。本来であれば身体の使い方にはいくつもやり方があって、筋力がすべてではないと教える指導者が増えていけば良いのにと、祈るのみです。

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