太極拳とうそ発見器
太極拳の練習の1つに 推手というものがあります。実際のところは太極拳に限らず、多くの中国拳法では推手の練習をしています。意拳も推手の練習を多くしますが、太極拳よりも攻撃的な推手です。
太極拳の推手にも色々な種類があります。シンプルなものは足を動かさずに片手で行います。お互いの手首を触れた状態で相手の重心を動かしてバランスを崩すように、相手を押していきます。押された方は、相手の押してきた腕を柔らかくいなす様にして、力を吸収して受け流します。この時に腕の力は殆んど使いません。身体の動きと腕の纒絲勁で、相手の腕に負担をかけずに力の方向を僅かにずらして、自分の正中線から少し外れた所を相手の力が通り過ぎるようにします。押してきた方にしてみると、せっかく押したのに、暖簾に腕押しで、手応えなく自分が独り相撲をしているような不思議な感じになります。押す時には、お互いにタイミングや力の加減を変えて、相手の化勁が失敗するように工夫します。そうしたお互いの思惑は、顔には出なくても、練習を積みますと触れ合っている手首から情報が取れるようになります。目に見える予備動作は消せても、触れている状態だと、微妙な力の変化を気取られてしまいます。このように、相手に触れている所から相手の情報を読み取る力を聴勁と言います。これも、推手の練習目的の1つです。
相手の腕に軽く触れて、相手がドキドキするような質問をすると、相手の動揺が感じ取れる事があります。相手の視線の動きからウソを見破る技術もありますが、聴勁を訓練すると、簡便な人間ウソ発見器になれそうです。乱用は人間関係を乱すので慎みたいところです。
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